第２回芸短生に薦める図書の紹介コンクール表彰式を行いました

　やなせたかしと聞いて、誰だ？と思う人もいるでしょう。だけど、アンパンマンを描いている人だと聞けば皆さんきっと、あぁ！と思うのではないでしょうか。アンパンマンは大人気で、私も小さい頃からよくテレビで見ていたし、ぬいぐるみなんかも持っていました。大人になった今でもアンパンマンが大好きです。
　今年の夏、大分市美術館で、「みんな大好きアンパンマン　やなせたかしの世界」という展覧会がありました。この展覧会では、アンパンマンの原画だけでなく、やなせさんが描いた他の絵本の原画や詩なども展示されていました。アンパンマンの絵はもちろんとてもかわいかったのですが、私がこの展覧会で一番心を奪われたのは詩でした。やなせさんが「アンパンマンの歌」や「てのひらを太陽に」などの作詞家であるというのは知っていましたが、たくさんの詩を描いているというのは知りませんでした。詩というと少しとっつきにくい印象があったのですが、やなせさんの詩はわかりやすく、その分心に直に響くものがありました。
『絶望のとなりにだれかがそっと腰かけた
絶望はとなりの人に聞いた
「あなたはいったい誰ですか？」
となりの人はほおえんだ
「私の名前は希望です」』
この詩を読んだ時、心を打ち抜かれました。私がもし仮に、絶望に立たされたとしても、この詩を知っているというだけで他の人よりも強くいられるのではないかとさえ思えました。それから私は、やなせさんの詩集を読むようになり、そしてこの「幸福の歌」という詩集に出会いました。
『絵をかきたい
詩をかきたい
だれのために
なんのために
だれのためでもない
なんのためでもない
私の心がのぞむから』
この詩集の中の詩です。
　自分は何のために絵を描いているのだろうか？以前はよくこうやって悩み、答えがでず落ち込む事が多くありました。だけど、この詩と出会って、自分の心が一番、描きたいと望んでいるから描いてるんだ！と気付かされ、以前よりも悩まず、楽しく描けるようになりました。今では、私のバイブル的な詩となっていて、毎日読んでいるほどです。
　やなせさんの詩には他にも素敵で暖かい詩がたくさんあります。中には、人生観を変えられてしまうような詩もあります。詩を読むという行為は少し恥ずかしいと思う部分もあるかもしれませんが、やなせさんの詩はその恥ずかしさを持ってでも読む価値があると私は思います。是非一度読んで、皆さんの心にも暖かいものが残ればいいなと思います。