創立50周年記念式典 学長式辞

(2011年10月01日)

中山学長
 本日、ここに大分県立芸術文化短期大学創立50周年の記念式典を、本学同窓会ならびに後援会と共催で挙行するにあたり、お忙しい中、出席を賜りましたご来賓の方々を始めとして、会場にお越しの皆様に心より御礼申し上げます。

 この50年を振り返ってみますと、本学は、昭和36年、美術科と音楽科から成る、公立としては全国的もユニークな短期大学として別府市で開学しました。その後、昭和50年に大分市に全面移転、平成4年に人文系の国際文化学科と情報コミュニケーション学科を新設、平成18年に独立行政法人化、翌年には美術科と音楽科に2年制の認定専攻科を開設するなど、着実な歩みを続けて参りました。
今や創立以来の卒業生は1万2千人を超え、中には日本のみならず、世界的に活躍する芸術家も輩出しています。ちなみに今年度は、全国29の道府県から入学してきた900名を超える芸術系と人文系の学生が、一つのキャンパスの中で身近に接し、刺激し合いながら勉学に励むという、全国でも極めて特色のある公立短期大学となっています。

 私は、今日丁度学長就任3年になりますが、このユニークな短大に着任して、最初に気がついたことは、その良さが世の中に伝わっていないということでした。考えた末に、「小さくてもキラキラ輝く宝石のような大学、そして学生」という合い言葉で、外に向かって発信を始めることにしました。発信を光に例え、学生達が教職員と一緒に社会に出て行くこと自体が、学生達への社会経験という形の光の反射で、返ってくることを願いましたが、お陰様で「芸短は変わった」という評価を頂けるようになり、沢山のご声援を頂きました。今本当の意味で社会に対して真の貢献をしていくステージになってきていると責任の重さを痛感しているところです。

 このように、本学創立の時から今日に至るまで、学外及び学内の関係者諸氏が、本学発展のため、いかに多くの英知、熱意、改革のエネルギーを本学に注がれたことか、今さらながら深く敬意を表し、感謝を申し上げる次第です。と同時に、私どもは、これまでの伝統を誇りとしながらも、それに安住することなく、地域社会から投げかけられている新たなニーズに応え、更に発展を目指さなければならないと、思いを強くしているところでございます。
そのニーズがすなわち本学の存在意義につながる訳ですが、その点に関してここでは二点申し上げたいと思います。
その一つは、まずは何と言っても、本学が、2年間という短期間にもかかわらず質の高い教育を行い、感性豊かな人材を育成し学生の多様な進路に対応しているということと、こうして育てた人材を広く大分県内に定着させているということです。
その二は、昨今の世界的な景気低迷や自然災害の発生などでこれまでになく先行き不透明となっている社会経済情勢のもと、少子化や家計悪化の影響とも相まって、ともすれば明るい展望を見出すことはなかなかできない中で、本学の存在意義が今後どのように変わり、どうすれば高めていけるのかということです。

芸術文化短期大学の外観
 少し詳しくお話ししましょう。まず第一の点ですが、本学はきめ細かい人材育成と学生の多様な進路に対応しています。いくつか具体的な話をさせていただきますと、学生は、入学後すぐに芸術・文化に関するカリキュラムを履修し始めるとともに、6月頃には早くも自分の進路について検討し始め、企業や官公庁などでインターンシップ、つまり就業体験に参加します。そして秋からは本学的に専門課程を履修、2年生になると卒業研究・卒業制作を通して専門的な知識や技能を深めつつ、自分の進路を決定していきます。たった二年間ではありますが、学生達は、忙しく充実した学生生活を送り、見違えるように成長していくのです。
これを可能にしているのが、学生と教員の距離が極めて近く、学生一人ひとりの顔を見ながらきめ細かい指導を行っている、本学の教育システムです。中でも強調したいことは、教員たちがカリキュラムを工夫して様々な科目で学生を地域社会の中で学ばせていることです。学生達は、県内各地域の方々と協働して、地域の賑やかさを演出したり、地域の抱える課題に取り組むことで、社会性をしっかり身に着けていきます。社会体験学習を通じて自分を磨き、適性を知り、進路を選択しています。こうした教育密度の高さが高校卒業後の二年間で大きな教育成果を生み出しています。
平成22年度の卒業生及び修了生の進路の概要を申し上げますと、就職が約5割、進学が約3割、残り2割が芸術活動等の継続となっています。全国の短期大学と比較した場合、4年制大学への編入学が多いことも、大きな特徴です。経済的負担の少ない本学の教育システムで、2年間みっちり学び、さらに他大学等で2年の課程に踏み出すという、いわば賢い選択が行われているようです。
卒業生の進路につきましては、本学は、大分県に有為な人材を供給していることも、強調しておきたいと思います。昨年度の卒業生・修了生の就職者全体の約8割、168人が、県内100社以上の企業等に就職しています。県内出身学生は、県外で就職した5人を除き、139人、97%が県内で就職いたしました。しかも特筆すべきは、県外出身の学生です。就職した者の実に半数、29人がこの大分の地にとどまり就職しています。このような結果は、昨年度だけの話ではなく、例年の傾向です。これは間違いなく、地域社会と一体となった教育活動やインターンシップの成果であると考えております。まとめますと、本学は、県外から本県に多くの若者を呼び寄せ、大分に定着させている点で、大分県に無くてはならない高等教育機関であります。

 さて、皆様に申し上げたい二点目ですが、このような不透明な時代であるからこそ、本学はいっそう魅力ある高等教育機関として、一層の存在意義を示さなければなりません。それには、学科の再編やカリキュラムの改革・改善を行うとともに、多様な進路選択に対応した指導を充実し、特に就職の強化を行なうことが重要です。
また、団塊の世代をはじめとする、多様な世代による学び直しといった現代のニーズに応えるために、これまでの公開講座を刷新し、県民の生涯学習を視野に入れ、より一層「開かれた大学」を目指すべきだと考えます。
地域社会への貢献では、今や本学の顔ともなっている地域巡回演奏会やスケッチ大会、さまざまな地域行事・イベントへの参加などに加え、企業やNPO、自治体とも連携し、課題解決に取り組んで参ります。
 諸先輩の長年の願望でありました本学の4年制大学への移行につきましては、地域における本学の存在意義を高めるという観点からは、我々にとっても大きなテーマであります。しかし、必要とされる投資額の大きさや、他の高等教育機関のバランスから見た本学の相対的な魅力度、保護者の家計負担の増加等々を考慮すると、当面は、4大化を視野に入れつつも、本学の特徴や強みをいかして、短期大学であるメリットを極限まで生かして、地域ニーズに応えた質の向上に取り組んで行くという選択肢をとりたいと思います。このことが、今後続くであろう、大学を巡る厳しい社会の荒波を乗り越えるのに適した、スリムな姿であり、機が熟した曉には、いつでも4年制大学に移行できる礎を作ることにつながるものと信じています。

 いずれにしましても、この大きな節目を機に、教職員一同気持ちを新たにして教育、研究、地域貢献に全力を尽くしてまいります。何卒、今後ともご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げまして、式辞とさせていただきます。本日はどうもありがとうございました。

平成23年10月1日
大分県立芸術文化短期大学  学長  中山 欽吾

このページのトップへ▲

HOME > 大学案内 > 学長からの­メッセージ­ > メッセージ > 創立50周年記念式典 学長式辞

入試情報 学長メッセージ 第52回卒業修了制作展 ムービーギャラリー 竹田キャンパス
教育と研究
文部科学省2009年度
大学教育推進プログラム
地域等との連携
法人・大学運営
施設利用について
お問い合わせ
2015年度版大学案内