平成22年度は「過去と未来の交差する十字路」
(2010年4月1日)
平成22年度は「過去と未来の交差する十字路」~ビジョンの方向を提示
大分県立芸術文化短期大学
学長 中山 欽吾
学長 中山 欽吾
新年度を迎えるに当たって、私の所感を述べたいと思います。理事長・学長として、大学運営に従事して1年半が過ぎました。私自身、おぼろげながら本学の持つ実像をイメージできるようにはなったと思います。まだ十分に深く理解するには至っていませんが、少なくとも前向きに将来を展望する足場は固まったと実感しています。
しかし、芸文短大の現実を見ると、今回の不況が大学経営に及ぼす影響は極めて大きいことを実感せざるを得ず、悠々としていることはできません。地方に立地する短期大学という業態が将来にわたって安定して維持できるのか、さらに発展できる余地や可能性はあるのか、それとももう役割が終わりつつあるのかなどを考える上で重要なサインであると感じています。つまり、外部環境の激変によって新たな判断のヒントがもたらされたと考えることもできるし、逆境のなかに復活再生のヒントが隠されているということでもあると思います。
一方で、22年度は芸文短大にとって極めて重要な年だと考えています。18年4月1日に芸文短大が法人化されて、本日はちょうど5年目を迎えました。今年度は大学認証評価を受ける年にも当たっています。また来年、平成23年度は芸文短大創立50周年を迎えますし、法人化6年目を迎え、県から運営費交付金のコミットを受けている最終年というターニングポイントでもあります。
つまり今年度は、近未来の芸文短大のあるべき姿を構想するために残された最後の1年、言葉を替えれば「過去と未来の交差する十字路」に立たされている年とも考えられます。その最重要課題は、「将来どの道を選ぶかの大筋の方向性を提示しなければならない」ということであります。
方向性の見直しには、大きな立場から仮説を立て、その実証を進める手法が適しているように感じています。ただし、このような大学の将来を構想するようなケースでは、仮説の立て方が重要で、私自身の主観とは別に学内に立ち上げたビジョン委員会(学長諮問機関・吉山尚裕委員長)の検討の道筋をお聞きしながら、摺り合わせを行うことで、最も確実で挑戦に値する方向性が確立できると確信しています。
検討を進める方法は、最初に将来の芸文短大はどのような姿が望ましいのか、その仮説を立てます。その仮説レベルに到達するにはどうすればいいか、最終的にはどのような姿になるのか、など現実から出発してゴールに至る道筋をイメージしていくという訳です。その手法として、立場によって大きく区分けしたセグメント毎に事実を見ていき、その事実の先に仮説を実現するヒントがあるかを検討していくのが全体をバランスよく進めることができると思います。
セグメントは、「大学自身」、「評価者」、そして「競合先」を選ぶことにしましょう。このような手法は、十数年前に勤務していた民間会社で研究開発計画を担う企画部門の責任者として、会社の将来を築いていく研究開発の方向性を答申するプロジェクトを率いた時の経験に基づいています。実戦的なアプローチですが、意外にもれなく様々な情報を分別整理して、検討することができました。その後、音楽団体の二期会の経営を立て直したときも、この手法を使って成果を挙げました。
まず「芸文短大自身」ですが、学生の満足度、大学の枠組み、大学の提供している教育環境と行っている教育の中身、入学・卒業(就職、進学)の入口と出口管理の状態など、多岐にわたるチェックポイントがあります。次は「評価者」です。一般の企業なら評価者は顧客に当たります。これも一例を挙げれば、学生の就職先企業、芸文短大に魅力を感じて本学に進学を希望する高校卒業予定者とその家族、県立大学として運営費交付金を受けているという立場からいえば大分県も評価者です。卒業生にとっては、自分の出身大学が高い評価を受けていることが実感できることが重要です。卒業生は大学から離れていますから、むしろ外部にいる大切な応援団だという認識も必要だと思います。卒業生がご自分の子女に本学進学を薦めるケースがたくさんあることは、重要な評価の結果だと思います。
芸文短大の「競合先」をリストアップして、特質を比較するという形で検討を進めると、本学の長所・短所が見えてくるのではないかという意味で、本学のユニークネスや相対的魅力度のアップにつながるでしょう。芸術系における競合先には、少子化によって4年制大学の受け入れ枠が広がったとされる、その余波をどの科がどのように受けるのか考えてみる必要もあるでしょう。
以上のように、事実が積み上げられたら、次はその事実から何を読むのかということです。仮説達成への道筋を付けていくのです。これらの作業は、まさに今年から来年にかけたて詰めていくべき優先課題だと思います。
最後に教員と事務局の皆さんに、一言ずつ感謝の意を込めて、コメントさせていただきたいと思います。
先ず先生方ですが、皆さんの教育者としての姿に対する、私の尊敬と期待をお話しします。学生への社会適応への動機付けを進めようとすると、率先して社会に出て行く陣頭指揮が必要となる半面、研究に割く時間や精力が犠牲になってくることが考えられます。研究・教育以外に大学運営上、役割分担せざるを得ない専門委員会等の業務の忙しさは、どの大学も無視できないほど肥大化しているのが実態であります。しかしそのなかで、研究・教育との優先順位や時間の割り付けを行うのは、かなり難しい決断が必要であると、同情の念を禁じ得ません。しかし、その忙しさの先に高い教育効果を享受している学生を見守り、その巣立ちを見送ることの素晴らしさを日々の糧に頑張っていただきたいと願うものです。
ただ、学長として配慮すべきは、それぞれの業務の優先付けや皆さんのモチベーションをどうするのか、私のリーダーシップを必要としているように思います。先般の専門委員会の統合もその一つで、共通部分のある委員会を統合することで、委員間で優先順位や役割分担が自主的に協議され実行されることを期待しています。それでも済まない業務の優先順位の調整は、私自身が負うべき役割だと思いますが、このような問題はなかなか顕在化してきません。どうか、教授会その他の機会に問題提起をしていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。
特に、最初にも申し上げましたが、芸文短大の将来を舵取りしていく過程で、教育環境をさらに高めていくことは必須の課題です。今年度中に従来からある問題点を確実に改善していかなければ、来年度以降の様々な変化に対応できる機動性が確保できなくなることを危惧するものです。私自身もっと皆さんと会話をする時間を確保していきたいと願っています。
教務学生部で事務の役割を担っておられる部長、副部長の先生方のご苦労も感謝にたえません。どうかよろしくお願いします。
最後になりましたが、事務局の皆さんにお伝えします。事務局の皆さんは少人数でありながら、多岐にわたる業務を効率的に処理していただいており、頭が下がる思いです。毎年、県からの派遣職員が何人も交代するのは、皆さんご自身の責任ではありません。大学採用の事務職員の方々が期待に沿う仕事をしていただいていることを含め、事務局全体がこのような環境に負けずに、極めて広範な業務を処理していただいているのは有り難いことです。昨年、仕事を効率的に進めていただけるように、事務室のリニューアルを行いました。全体として効率的な、学生にも気軽に立ち入りやすい事務室を完成させてください。本学卒業生の臨時事務職員もキビキビと仕事をこなしていますが、若さと華やかさが事務室を明るくしているのも嬉しいことです。芸文短大で働くということに前向きの気持ちを感じていただいているとすれば、学長としても我が意を得ることであり、今後ともに素晴らしいキャンパスを完成させて行くために、情熱を傾けていきたいと、共に念願するものです。
しかし、芸文短大の現実を見ると、今回の不況が大学経営に及ぼす影響は極めて大きいことを実感せざるを得ず、悠々としていることはできません。地方に立地する短期大学という業態が将来にわたって安定して維持できるのか、さらに発展できる余地や可能性はあるのか、それとももう役割が終わりつつあるのかなどを考える上で重要なサインであると感じています。つまり、外部環境の激変によって新たな判断のヒントがもたらされたと考えることもできるし、逆境のなかに復活再生のヒントが隠されているということでもあると思います。
一方で、22年度は芸文短大にとって極めて重要な年だと考えています。18年4月1日に芸文短大が法人化されて、本日はちょうど5年目を迎えました。今年度は大学認証評価を受ける年にも当たっています。また来年、平成23年度は芸文短大創立50周年を迎えますし、法人化6年目を迎え、県から運営費交付金のコミットを受けている最終年というターニングポイントでもあります。
つまり今年度は、近未来の芸文短大のあるべき姿を構想するために残された最後の1年、言葉を替えれば「過去と未来の交差する十字路」に立たされている年とも考えられます。その最重要課題は、「将来どの道を選ぶかの大筋の方向性を提示しなければならない」ということであります。
方向性の見直しには、大きな立場から仮説を立て、その実証を進める手法が適しているように感じています。ただし、このような大学の将来を構想するようなケースでは、仮説の立て方が重要で、私自身の主観とは別に学内に立ち上げたビジョン委員会(学長諮問機関・吉山尚裕委員長)の検討の道筋をお聞きしながら、摺り合わせを行うことで、最も確実で挑戦に値する方向性が確立できると確信しています。
検討を進める方法は、最初に将来の芸文短大はどのような姿が望ましいのか、その仮説を立てます。その仮説レベルに到達するにはどうすればいいか、最終的にはどのような姿になるのか、など現実から出発してゴールに至る道筋をイメージしていくという訳です。その手法として、立場によって大きく区分けしたセグメント毎に事実を見ていき、その事実の先に仮説を実現するヒントがあるかを検討していくのが全体をバランスよく進めることができると思います。
セグメントは、「大学自身」、「評価者」、そして「競合先」を選ぶことにしましょう。このような手法は、十数年前に勤務していた民間会社で研究開発計画を担う企画部門の責任者として、会社の将来を築いていく研究開発の方向性を答申するプロジェクトを率いた時の経験に基づいています。実戦的なアプローチですが、意外にもれなく様々な情報を分別整理して、検討することができました。その後、音楽団体の二期会の経営を立て直したときも、この手法を使って成果を挙げました。
まず「芸文短大自身」ですが、学生の満足度、大学の枠組み、大学の提供している教育環境と行っている教育の中身、入学・卒業(就職、進学)の入口と出口管理の状態など、多岐にわたるチェックポイントがあります。次は「評価者」です。一般の企業なら評価者は顧客に当たります。これも一例を挙げれば、学生の就職先企業、芸文短大に魅力を感じて本学に進学を希望する高校卒業予定者とその家族、県立大学として運営費交付金を受けているという立場からいえば大分県も評価者です。卒業生にとっては、自分の出身大学が高い評価を受けていることが実感できることが重要です。卒業生は大学から離れていますから、むしろ外部にいる大切な応援団だという認識も必要だと思います。卒業生がご自分の子女に本学進学を薦めるケースがたくさんあることは、重要な評価の結果だと思います。
芸文短大の「競合先」をリストアップして、特質を比較するという形で検討を進めると、本学の長所・短所が見えてくるのではないかという意味で、本学のユニークネスや相対的魅力度のアップにつながるでしょう。芸術系における競合先には、少子化によって4年制大学の受け入れ枠が広がったとされる、その余波をどの科がどのように受けるのか考えてみる必要もあるでしょう。
以上のように、事実が積み上げられたら、次はその事実から何を読むのかということです。仮説達成への道筋を付けていくのです。これらの作業は、まさに今年から来年にかけたて詰めていくべき優先課題だと思います。
最後に教員と事務局の皆さんに、一言ずつ感謝の意を込めて、コメントさせていただきたいと思います。
先ず先生方ですが、皆さんの教育者としての姿に対する、私の尊敬と期待をお話しします。学生への社会適応への動機付けを進めようとすると、率先して社会に出て行く陣頭指揮が必要となる半面、研究に割く時間や精力が犠牲になってくることが考えられます。研究・教育以外に大学運営上、役割分担せざるを得ない専門委員会等の業務の忙しさは、どの大学も無視できないほど肥大化しているのが実態であります。しかしそのなかで、研究・教育との優先順位や時間の割り付けを行うのは、かなり難しい決断が必要であると、同情の念を禁じ得ません。しかし、その忙しさの先に高い教育効果を享受している学生を見守り、その巣立ちを見送ることの素晴らしさを日々の糧に頑張っていただきたいと願うものです。
ただ、学長として配慮すべきは、それぞれの業務の優先付けや皆さんのモチベーションをどうするのか、私のリーダーシップを必要としているように思います。先般の専門委員会の統合もその一つで、共通部分のある委員会を統合することで、委員間で優先順位や役割分担が自主的に協議され実行されることを期待しています。それでも済まない業務の優先順位の調整は、私自身が負うべき役割だと思いますが、このような問題はなかなか顕在化してきません。どうか、教授会その他の機会に問題提起をしていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。
特に、最初にも申し上げましたが、芸文短大の将来を舵取りしていく過程で、教育環境をさらに高めていくことは必須の課題です。今年度中に従来からある問題点を確実に改善していかなければ、来年度以降の様々な変化に対応できる機動性が確保できなくなることを危惧するものです。私自身もっと皆さんと会話をする時間を確保していきたいと願っています。
教務学生部で事務の役割を担っておられる部長、副部長の先生方のご苦労も感謝にたえません。どうかよろしくお願いします。
最後になりましたが、事務局の皆さんにお伝えします。事務局の皆さんは少人数でありながら、多岐にわたる業務を効率的に処理していただいており、頭が下がる思いです。毎年、県からの派遣職員が何人も交代するのは、皆さんご自身の責任ではありません。大学採用の事務職員の方々が期待に沿う仕事をしていただいていることを含め、事務局全体がこのような環境に負けずに、極めて広範な業務を処理していただいているのは有り難いことです。昨年、仕事を効率的に進めていただけるように、事務室のリニューアルを行いました。全体として効率的な、学生にも気軽に立ち入りやすい事務室を完成させてください。本学卒業生の臨時事務職員もキビキビと仕事をこなしていますが、若さと華やかさが事務室を明るくしているのも嬉しいことです。芸文短大で働くということに前向きの気持ちを感じていただいているとすれば、学長としても我が意を得ることであり、今後ともに素晴らしいキャンパスを完成させて行くために、情熱を傾けていきたいと、共に念願するものです。
以上
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