芸文短大52年目の取り組み~直近の問題点解決と中長期の方向付け~

(2013年04月01日)

大分県立芸術文化短期大学 
学長 中 山 欽 吾
はじめに
 平成25年度を迎えるにあたって、学長としての思いをお伝えすることとしたい。まず、今年度から次項で述べるコース改訂を行った。いずれも本学の将来を見越した改革であるが、優秀な学生を安定して集めるための魅力作りという側面と、その結果としての本学のレベル向上が目標だ。
 経営面から見ると、人件費が7割を超える本学の収支構造の中で、交付金の減少と学生数に依存する収入の不安定が重なることで、経営危機に直結するリスクとなっている。この危機的状況は、まだ数年続くことを直視し、具体的な収支改善策を立てて実行しなければならない。

今年度の大きな改革点
 今年度から下記のコース改訂が実施に移された。
1)国際総合学科の発足
2)美術科のデザイン専攻の大幅なコース改訂
3)音楽科への吹奏楽の導入
 まず、昨年度まで2年連続で定員割れを起こした国際文化学科が、この新学期から「国際総合学科」として新たに出発した。同じ人文系学科でも、Media[メディア]/Information[情報科学]/Psychology[心理学]/Sociology[社会学]という4分野を明確にしている情報コミュニケーション学科には定員割れがなかった。その一方で、語学を含めた幅広い教養教育を特色とした従来の国際文化学科の運営では、本学への進学を希望する学生に対する魅力の訴求が不足と考えられた。そこで、従来からの特長である教養教育をベースにしながら、国際コミュニケーション、観光マネジメント、現代キャリアの3コースを設定して、学科としての学生の育成方針をはっきりと示すことにした。その結果、この春の入試では定員を上回る入学生の確保がなされ、初年度にして改革の効果があったものと判断した。この流れを定着して来年度以降もさらに内容を深めたい。
 美術科デザインコースでは、デザイン専攻と生活造形専攻を統合して、新たにビジュアルデザイン、メディアデザイン、プロダクトデザインの3コース制とし、1年生前期にはその全ての基礎を全員が学び.後期以降専門別に分かれるという新しいカリキュラムを編成した。
 従来はビジュアルデザイン志望者が生活造形志望者を遙かに上回り、生活造形を選んだ学生は大部分が第2志望だったものを、今回はデザイン全体として一括募集し、1年後期から3つの専攻に分けるという方式にした。コースの内容も時代の要請に合わせて、工業的な進歩を取り入れていくのは、卒業後の場をどう確保するかという考えに基づくものだ。これも応募者は好調だった。
 音楽科では吹奏楽教育を導入することとした。従来から管楽器と打楽器をオーケストラ教育と連動する形で育ててきた。地方のしかも短大でフルオーケストラを維持し続ける大学は他にない最大の特長だ。しかし、全ての学生がプロの演奏家になるわけではないことを考えると、吹奏楽もまた地域への人材貢献になり得ることは確かで、特に管楽器と打楽器の学生の充実した教育にもつながると考えた。
 今回、このように新しい学科運営方針に基づいて、新規に採用が決まった先生方は、多人数の応募から最後まで残った期待あふれる方ばかりであるので、全力で教育に当たっていただきたい。

教員についての問題
 本学は、900名強の学生が一本のエスカレータを登っていくような単純な教育の場ではなく、それぞれが多様な選択肢を持って勉強している場である。そのために教員の学生に対する係わりは、単純に講義をするだけでなく、各学生の望む進路にうまく乗れるようほとんどマンツーマンともいえる個別指導態勢をとっている。必然的に学生との距離も近くなり、それが本学の大きなメリットともなっている。
 芸術系と人文系の教育方式の違いや、学生のメンタリティの違い、教員対学生の距離感の違いなど、学科毎の差が多く、全体を決めればうまくいくという保証はない。それでも先生方の学生に対する誠実で真剣な姿勢は共通に言えることで、それが学生のモチベーションを高める大きな力となっている。
 ただ、学生にはまだ経験が不足し、習得ができていない未完成の部分が多いので、2年という限定された期間に、いかに社会性を身につけさせるのか、更に工夫を要する。 


本学の経営に係わる問題点
以上のような全体像の中で、平成25年度の大学運営計画を立てたが、問題は山積している。
1)予算の硬直化
 本学の運営に要する資金は、大きく分けて①県からの交付金、②入学した学生が払う受験料、入学金、授業料等の合計である。その他、競争的外部資金がこれに加わる。予算について問題となるのが人件費で、全予算の75%に達する常勤・非常勤教員の給与、事務局員給与は、自らの努力で減じることは難しい。そこで、昨年度にこの2,3年で定年を迎える教員の他にも、定年前の自主的早期退職を募集したところ一定数の応募を得た。
2)時代に合わせてカリキュラムをしなやかに見直す必要がある
 本学だけの問題ではないが、教員と授業科目はセットになっていて、その教員が何らかの理由で退職(他大学への割愛を含む)するとき以外には、カリキュラムの大幅な変更は難しい。したがって、カリキュラムの大幅な内容変更が可能となるのは、定年退職のようなあらかじめ判明している交代のタイミングしかない。大学自体を急速に変わりつつある時代に合わせてしなやかに変えていくためには、あえてこのような機会を捉えて措置を考える必要がある。
 国際文化学科の場合も、そのようなタイミングで、内容を大きく改善できた。この改善とは、今まで教えていた科目がなくてもいいということではなく、より必要度の高い科目や教育内容と入れ替えるという意味である。
 デザイン専攻では、新しい分野のデザインの進歩をいち早く本学の教育に取り込むため、教授の退任に合わせて、カリキュラムの入れ替えを行った。新たにプロダクトデザイン部門を発足させ、工業界との接点を求めて工業デザインのプロを教員に採用した結果、ビジュアル、メディア、プロダクトという現代デザイン界の主流である三部門を持つデザイン部門に生まれ変わった。
 一方音楽科は、今年度から新しく吹奏楽の教育を始めることを決め、オーケストラにはない楽器、サキソフォーンとユーフォニアムを導入した。
 本学全体として定年退職者は、この先も予定されており、カリキュラムの再検討という観点からは、この段階で一区切りとなるよう、準備を進めているところである。
3)生涯学習部門の発足
 いよいよ本年度から生涯学習部門が発足する。まだまだ試行錯誤が続くと思われるが、将来を考えて前向きに進めて行く覚悟である。走り始めると、色々な問題が出て来ると思われるが、受講者のニーズを良く取り込んで、改善していく、いわゆるPDCAの輪を回す事が重要である。
4)外部資金の導入
(アートマネジメント人材育成プログラム)
 一方で新たな将来志向の計画もある。資金援助を伴う政府からのプロジェクトであるが、内容を良く検討して、メリットがあるなら果敢に獲得に向かうべきだと考える。
 劇場法の制定と共に文化庁から各地方の芸術系大学に、アートマネジメント人材の育成プログラムを作って各地の文化会館スタッフの専門教育をすることを目的とする「アートマネジメント人材育成プログラム」が競争的資金として25年度から募集されることとなった。本学は総合文化ゾーンとの互恵的運営の方向性が示されているから、このプロジェクトは是非獲得したい財源だ。

大学を活用した地域芸術文化振興事業
 地域の文化振興のために行うコンサートやアウトリーチなどの2分の1助成も今回打ち出された文化庁のプロジェクトで選ばれれば利用可能だ。例えば、毎年行っている芸短フェスタや地域巡回の音楽会や絵画展、ふるさとスケッチ、竹田プロジェクトなどの地域の町おこしに関係する活動は、毎年予算を計上して行っているが、予算に限界があって思うような活動の拡大が難しい。2分の1助成は大きな財政サポートとなるはずなので、このような行事の充実と拡大が対象となると考えられる。

まとめ
 今年は、時代や本学特有の様々な問題が集中して起きている。引き続き大学として必要な対応を行うだけでなく、その機を利用して、より高いレベルへの到達をはかるべく、今後も検討を怠らないことを強調したいと思う。  了

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