Epistula Vol.14 (2009年01月01日付)掲載

オペラとミュージカル・・似て非なるもの

 二期会オペラ研修所で学んでいたオペラ歌手のたまごが、難関のオーディションを勝ち抜いてミュージカルの主役を射止めました。その初日、満員の帝劇で伸びやかに歌う彼女は、その声楽的に鍛えられた歌唱が群を抜く見事なデビューでした。ミュージカルでは、歌も音楽もマイクで増幅しますから音量調整は意のままですし、歌いながらでも強いリズムに乗って舞台一杯走り回ることができます。ロングランのため主役級は数人のキャストが演じます。彼女の場合、東京で3ヶ月、福岡で1ヶ月のロングランで、しかも昼夜の公演を3名交代で出演したのです。
 一方、オペラは歌と音楽が命ですから、歌手は高度の芸術性や歌唱技術が必要です。その習得にはかなりの年限が必要だし、大編成のオーケストラに肉声の歌を重ねていきますから、身体能力ぎりぎりの歌唱を続けなければなりません。毎日どころか、中1日か2日空けなければ声帯を痛めてしまうのです。ましてや、歌って踊ってという激しい動きは大変な肉体的負荷となりますから、聴かせどころの歌(アリア)は客席に向かって突っ立って歌う時代が長く続きました。
 原語で歌うオペラは難しいと思う人も多く、公演回数が少ないから入場料も割高になり、十分な予算をかけられなくなるという悪循環に陥ってしまいます。悩んでいるときに、ミュージカルで満員の客が熱狂している成功例がいやでも目に入ります。二期会オペラでもドラマの展開を歌と音楽だけに頼らず、出演者の身体表現も総動員した緊迫感溢れる舞台を作って行く方針を決め、演劇やミュージカル畑の演出家を起用して新しい舞台作りを始めています。ベテラン歌手に混じって、このような動きをこなせる若手歌手達にもどんどん脚光が当たる時代になったのです。
 オペラとミュージカル、その似て非なる存在は共存か淘汰かという方向にではなく、限りなく融合して新しい力を獲得する方向に進んで行くと確信しています。

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