1998年1月8日から18日までオーストラリアのパースで世界選手権が開催された。
参加国は男子が、AUS(開催国)、USA、GRE、HUN、RUS、ITA(FinaCup上位5カ国)、YUG、CRO、ESP、SVK(ヨーロッパ)、BRA、CAN(アメリカ大陸)、KAZ、IRI(アジア)、RSA(アフリカ)、NZL(オセアニア)の16ヶ国。女子は、AUS(開催国)、NED、RUS、ITA、CAN、GRE、USA(WorldCup上位6ヶ国)、ESP、HUN(ヨーロッパ)、BRA(アメリカ大陸)、KAZ(アジア)、NZL(オセアニア)の12ヶ国であった。
男子は予選が4ヶ国ずつA〜Dのグループに分かれ、各グループ上位3ヶ国がE、Fリーグへ進み、その中で各2位に入れば1〜4位ラウンドへ進めるというシステムである。女子は予選が6ヶ国ずつA、Bのグループに分かれ、各上位4チームでたすき掛け方式の準々決勝を行い、勝者同士で準決勝、そして決勝を行うシステムであった。
さて、男子の方では予選リーグでRUS 6-4 CRO、YUG 11-10 ITA、HUN 7-5YUG、ESP 7-6 GRE、AUS 7-6USAなどの白熱したゲームがあったが、決勝ラウンドに上がってきたのは、Eグループからヨーロッパ選手権優勝のハンガリー(1位、4勝1敗)、過激な応援団のいる強豪ユーゴスラビア(2位、3勝1敗1分)。一方、FグループからはGRE、AUS、USAをいずれも1点差で退けてきたスペイン(1位、5勝)、メインプールでの試合で地元の大声援を受けて勝ち上がってきたオーストラリア(2位、4勝1敗)であった。
準決勝第1試合は、ESP-YUG。ロースコアで試合は進み、退水を取るがスペインの堅い守りに阻まれ点が取れないユーゴ。3Pにやっと同点に追いついたスペインは、エスティアルテがペナルティスローを決め勝利(5-3)、決勝に進出した。とにかくディフェンスが固かった。もう1試合は、HUN-AUS。かなりハンガリーに分があり、AUSのパワーに頼った攻めを無難に守り10-5で勝利した。3位決定戦でもAUSはYUGに完璧に押さえられ(5-9)、ヨーロッパ水球の技術と巧みな試合運びに翻弄、シドニー五輪までにかなりの経験が必要と感じた。「AUSやUSAなどは、ここというときのシュートが雑だったという印象があった。この点がスペイン、ハンガリー、ユーゴ、イタリア等に敗退したと考えている。」(坂田先生評)
さて、決勝(ESP-HUN)は最終日の閉会式前にメインプールで行われた。カードとしては、アトランタ優勝のスペインとヨーロッパ選手権優勝のハンガリーという最高のカードであった。先に退水を奪いチャンスを得たのは、ハンガリーであったがシュートが決まらず、これが最後までシュートに微妙に影響を与えたのではないか(若吉さん評)。逆にスペインは、エスティアルテが退水ゾーンから相手の手に当たってコースが変わるラッキーなゴール。続いて、ゴール前でキーパーと交錯しながらサンツがゴールを決め波に乗った。2、3Pにスペインは点を奪えなかったが、完璧なディフェンスで相手を押さえ、4Pには退水ゾーンで2点、速攻で1点と完璧な勝利であった(6-4)。スペインの勝利の瞬間、筑波の現役諸君も顔見知りの選手達がプールの中でもみくちゃになって喜んでいた。自分もスペイン水球との交流を行った1人として感激した。
「スペインは退水奪取の後、タイミングよくタイムを取って、得点可能なメンバーにしていた。これは監督ジャネーの作戦と考えられるが、学ぶべき点である。また、交代の采配が冴えていたのではないかと思った。サンツとペレス、フローターバックスのチェンジ等うまく作動していたことがオフェンス、ディフェンスともによかったと評価したい。また、エステアルテの存在は、カウンターがあるので相手は余裕をもってシュートすることができない威力がひしひしと感じられた。ディフェンスがオフェンス的意味を発揮するところであった。こういう選手がいると得だと思った。」(坂田先生評)
1〜9位までは、ある程度力が接近していて調子や波によっては順位が変わる可能性があるように感じた。オーストラリアは地の利を活かして3決まで上がってきたが、ヨーロッパ勢にくい込むのは大変で、試合経験が必要で土壌の違いを感じた。上位にくい込むチームは、泳力、パワー、技術が高いことはいうまでもないが、攻撃としてはフローターが退水を取りセットで攻める、フローターが封じられた時や退水ゾーンの時にいいミドルシュートが打てる、守備としてはこれらのオフェンスをいかに防げるかということを兼ね備えていたと思う。日本などが上位に続いていくためには、チームディフェンスで相手の攻撃を守れたとしても、フローターやミドルシュートでは力が劣っており、これらの能力を磨くか違うカラーを打ち出していかなければならないと感じた。
一方女子の方は、6チームのリーグ戦のため5日連続で試合とハードな日程であった。準決勝に勝ち上がってきたのは、イタリア(B4位)、オーストラリア(A3位)、オランダ(B1位)、ロシア(A2位)。ITA-AUS戦は後半接戦にもつれ込み、6-3からAUSが終了間際に追いつき延長、そしてサドンデスへ。最後はITAが35秒ノータイム寸前にフリースローを7mシュート。それが、右コーナーに決まり決勝進出(10-9)。一方、相手は7-5でRUSを破った強豪NED。しかし予選を4位とぎりぎりで通過してきたイタリアが決勝でも波に乗り、NEDを相手に追いつ追われつの大接戦を演じた。特にフローターが3点を取り、4Pには速攻で1点をもぎ取り7-6で逃げ切った。女子はよく実情を知らないが、4強とそれ以下は少し実力差があるように感じた。「この差は、泳力と汚ないプレーをされても、平然とプレーでき得点や退水を取れる能力と理解した。」(坂田先生評)
大会の行われたチャレンジスタジアムは、非常に大きな施設であった。メイン50m×10コースに12,000人収容の仮設スタンド(これだけのスタンドを作れる回りのスペース)、男子水球屋外プール、女子水球屋内50m(仕切って1/3をアッププール)、飛び込みプール、シンクロプールとプールの数だけでもひとつの会場の中にたくさんあった。また、大会はお祭り的な雰囲気があり、特に広場に屋外カフェスタイルの食堂を設け、試合の合間に食事を取ったり、のんびりしたり、バンドの演奏、大道芸のパフォーマンスなども楽しめた。
さて、次回は2001年に福岡で開催されることになった。当然茗水の中にも選手として、競技役員や通訳として、観客として参加する方がいると思う。世界各国から強豪チームが集まってくるこの大会を今から胸をわくわくさせて楽しみにしている。