第５０回入学式・第３２回専攻科入学式　学長式辞

　大分県立芸術文化短期大学に入学された３９５名の皆さん、また４年前にスタートした認定専攻科の第４期生となる４９名の皆さん、御入学、誠におめでとうございます。ご臨席いただきました広瀬勝貞大分県知事、安部省祐大分県議会議長ほか、ご来賓の方々、本学役員、教職員とともに、皆さんの入学を心から歓迎いたします。

　また本式典にご参列下さいましたご家族、関係者の方々も、喜びは如何ばかりかと存じます。心からお祝いを申し上げます。

　さて、新入生の皆さんは、９年間の義務教育と３年間の高校生活を終えて入学されました。高校からそのまま入学された方もいますでしょうし、実社会の経験をお持ちの方もいますでしょう。また、今年は中国とネパールからの留学生もお迎えいたしました。待ちに待った今日の入学式を迎えられ、新鮮な気分の中にも、ホッとしている方、大学での教育に対する希望と期待に胸を膨らませておられる方、もしかすると多少将来への不安をお持ちの方もいらっしゃることと思います。ご家族の方々も、今までの来し方を感慨深く思い起こしていらっしゃることと思います。ただ、お子さまが大学に入学されると、今までとは比較にならないほど独立して自分の道を歩き始めることになりますので、これからは是非このことをご理解いただき、温かく見守って下さるようにお願いしたいと思います。

　冒頭にこのようなことを申し上げるのは、新入生の皆さんは早ければ２年後には、社会に巣立って行かなくてはならないからです。入学した年と卒業する年しかない短期大学では、スタート直後から独り立ちして社会に出て行くということを意識した勉強を全力投球でやっていかなければなりません。

　大分県立芸術文化短期大学は、４年前から公立大学法人という独立経営を行う組織になっています。大学は芸術系として美術と音楽、人文系として国際文化と情報コミュニケーションの四学科と、それに加えて、造形と音楽の二つの専攻科から成っています。そして、社会人になるための教育とは、本学の教育目的にも「幅広い教養及び優れた技能を有する人間性豊かな人材を育成し、もって芸術の創造、文化の進展、及び地域社会の発展に寄与する」とうたっているように、専門教育と並んで、教養教育が重要な役割を担います。皆さんの教育に当たる先生方は、専門家として研究活動も行っています。その高い専門性に裏付けされた内容を、どのように教えるのか計画を作り、講義の目的や内容を冊子にまとめたものが授業ガイド、「シラバス」と言われるもので、本日皆さんに差し上げています。そこには一般共通科目と専門科目が設定されており、必須科目や、選択科目に分けられています。これまでのように与えられた科目を一方的に受け入れるのではなく、この中から皆さんそれぞれが自分の学びたい科目を選んで勉強することになります。このことは、社会人になるためにどんな専門分野を伸ばしたいのか、どんな資格を取りたいのかといったデザインを、今から自分自身で描くことを意味します。

　もちろん、皆さんは各学科のいずれかに所属していますから、それぞれの学科の特徴ある専門知識や専門技能・技術の習得が基本になることはいうまでもありません。しかし、望めばもっと広い範囲の学習をする機会もあるということを忘れないでください。例えば人文系の皆さんは芸術系の教科から教養科目をとることができますし、その逆に芸術系の学生も人文系の学科をとることもできるからです。このことは、本学で学ぶ皆さんは、文化的な環境で２年間勉強できるという、芸術系と人文系の学科がお互いに顔が見える範囲のキャンパスでともに学んでいる環境ならではの特権でもあります。これは脳科学的に見ても、右脳と左脳のバランスの取れた成長に繋がり、人間性豊かな人格形成が行われると言われており、本学の大きな特長の一つです。

　また、高校時代まではご家族と友人中心の活動だったものが、大学に入って社会の方々、海外の方々とのおつき合いも始まります。

　例えば、在学中には、教育の重点の一つとして、様々な機会に学外で活動する体験的学習が用意されています。芸術系では、定期コンサートや出前コンサート、ふれあいアート、作品展等々、学外に出ての活動は、地域の人たちとのコミュニケーション力を養うために大いに役立つことでしょう。人文系でも地域社会特講という実社会で経験を積んでリーダーとなっている方々を招いて行う特別講義と、その講義に基づいて実地で実習するサービスラーニングを初めとして、多くの地域活動や社会活動に参加することができます。

　特に昨年度から始まった情報コミュニケーション学科が中心となって、全学科を巻き込んで実施する特別プロジェクトがあります。これは文部科学省から選定された３年間のプログラム、「体験をスキルに変えるナラティブ能力養成―サービスラーニングを中心とした自己の物語を探し創り発信する能力の形成プログラム」です。この取り組みに参加することによって、単に「経験した」というレベルから、経験したことを話し、自分の物語に変えていきます。「物語を語り、外に発信する」という段階まで高めることにより、教育と自分自身との成長が連動した独創的なプログラムであります。

　また、本学は大分市、由布市、竹田市とのほか、文化芸術団体やマスコミ等と友好交流協定を結んでいます。そのうち、海外ではニュージーランドのクライストチャーチ・ポリテクニーク・インスティテュート、中国の江漢大学、韓国のソウル市立大学校などとも友好協定を結び、短期の語学留学生を送っていますし、これからは更にその範囲を広げようとしています。国際的な交流の機会を含む様々な経験が、学生生活をさらに豊かにしていくことでしょう。

　専攻科についてもお話ししておく必要があります。
　芸術系の学科には造形と音楽の２コースの認定専攻科があります。短大卒業後、更に二年間の研鑽を行って、学士号をとることができるようになり、昨年、初めての修了生が学士号を取得しました。今年も４０名の皆さんが学士号を取得し、そのまま大学院に合格した方も複数出ています。専攻科に進まれる皆さんにとって、短大と認定専攻科の合計４年間の勉学は、４年制大学を漫然と過ごすのに比較してその集中度においてはるかに勝るものです。一層の専門性獲得のために自信を持って進まれて、更に学習を重ねて所期の成果を挙げられるよう心から願うものです。

　最後に、私が本学の将来をどう考えているのかを申し上げましょう。
　総合大学とは異なり、本学の規模は決して大きくはありません。しかし、私はキラキラ輝く宝石のような芸文短大にしたいと、かねがね言い続けています。このことはとりもなおさず、皆さん一人ひとりが輝いて、光を反射していくことで初めてできることです。そのためには自らを磨き、どんどん社会に出て行くことが、全体としてキラキラと輝くことになるのです。最近では、「芸文短大がもう輝き始めているよ」と、たくさんの県民から伺うようになりました。そこに皆さんの輝きも是非加えていただきたいものです。

　キラキラ輝くと言っても、どうすれば輝くの？　と思う方も多いでしょう。そこで私は、先日終わったバンクーバー冬季オリンピック、そしてパラリンピックで、多くの選手達が世界中の人たちにキラキラ輝く姿を見せてくれたことを皆さんに申し上げたいと思います。強い目標を持ち、何年にもわたって努力し、自らを高めるという行為が人を輝かせるのです。

　芸文短大は来年、創立５０周年を迎えます。ちょうど皆さんが２年生になるときです。皆さんがキラキラ輝くとき、芸文短大もきっともっともっと輝いてくれると信じています。

　明日からオリエンテーションが始まり、皆さんは最初に何を、どの先生に教わるのかを決めていく作業に入ります。明日に向かって、待ったなしの毎日が始まります。その気になれば、大きなこともきっとできる！と、私は断言しておきます。

平成２２年４月５日
大分県立芸術文化短期大学　学長　中山欽吾