第49回入学式・第31回専攻科入学式 学長式辞
2009年04月06日
芸術文化短期大学に入学された425名の皆さん、また2年前にスタートした認定専攻科の第三期生となる52名の皆さん、御入学まことにおめでとうございます。ご臨席いただいた広瀬勝貞大分県知事、安部省祐大分県議会議長ほか、ご来賓の方々、本学役員、教職員とともに、皆さんの入学を心から歓迎いたします。
また本式典にご参列下さいました皆さんのご家族、関係者の方々も、喜びは如何ばかりかと存じます。心からお祝いを申し上げる次第であります。
また本式典にご参列下さいました皆さんのご家族、関係者の方々も、喜びは如何ばかりかと存じます。心からお祝いを申し上げる次第であります。
新入生の大部分の皆さんは、9年の義務教育と3年の高校生活を終えて来られたわけで、入学式を迎えてホッとしておられる方、これからの道に対する希望と期待に胸を膨らませておられる方、もしかすると多少将来への不安をお持ちの方もいらっしゃることと思います。ご家族の方々も、今までの来し方を感慨深く思い起こしていらっしゃることと思います。ただ、お子さまが大学に入学されると、今までと比較にならないほど独立して自分の道を歩き始めることになりますので、これからは是非そのことをご理解いただき、温かく見守って下さるようにお願いしたいと思います。
なぜ冒頭にこのようなことを申し上げるかというと、新入生の皆さんは早ければ2年間の勉学の後には、社会に巣立って行かなくてはならないからです。入学した年と卒業する年しかない短期大学では、スタート直後から社会に出て行くということを意識した勉強を全力投球でやっていかなければならないのです。
大分県立芸術文化短期大学は、3年前から公立大学法人という独立経営を行う組織になっています。大学は芸術系として美術と音楽、人文系として国際文化と情報コミュニケーションの4学科と、造形と音楽の二つの専攻科から成っています。そして、社会人になるための教育とは、本学の教育目的にも「幅広い教養及び優れた技能を有する人間性豊かな人材を育成し、もって芸術の創造、文化の進展、及び地域社会の発展に寄与する」とうたっているように、専門教育と並んで教養教育が重要な役割を担います。新入生の皆さんの教育に当たる先生方は、専門家として研究活動も行っています。その高い専門性に裏付けされた内容を、どのように教えるのか計画を作り、講義の要旨を冊子にまとめて、皆さんに示します。それが、今日お渡ししたシラバス(授業ガイド)というものです。そこには一般共通科目と専門科目が設定されており、必須科目や、選択科目に分けられています。これまでのように与えられた科目を一方的に受け入れるのではなく、この中から皆さんそれぞれが自分の学びたい科目を選んで勉強することになります。このことは、社会人になるためにどんな専門を伸ばしたいか、どんな資格を取りたいのかといったデザインを、今から自分自身で描くことを意味します。
もちろん、皆さんは各学科のいずれかに所属していますから、それぞれの学科の特徴ある専門知識や専門技能・技術の習得が基本になることはいうまでもありません。しかし、望めばもっと広い範囲の学習をする機会もあるということを忘れないでください。例えば人文系の皆さんは芸術系の教科から教養科目をとることができますし、その逆もできるからです。このことは、本学で学ぶ皆さんは、文化的な環境で2年間勉強できるという、芸術系と人文系の学科がお互いに顔が見える範囲のキャンパスでともに学んでいる環境ならではの特権でもあります。
在学中には、教育の重点の一つとして、様々な機会に学外で活動する経験が用意されています。地域社会特講という実社会で経験を積んでリーダーとなっている方々を招いて行う特別講義と、その講義に基づいて実地で実習するサービスラーニング、定期コンサートや出前コンサート、ふれあいアート、作品展等々、学外に出ての活動は、地域の人たちとのコミュニケーション力を養うために大いに役立つことでしょう。高校時代まではご家族と友人中心の活動だったものが、大学に入って社会の方々とのおつき合いが始まるわけです。このような社会経験ができる科目は、それを提供する学科だけでなく他学科の学生にも単位が認められており、皆さんが実際に社会に出るための心の準備をすることを重視する、本学の大きな特長の一つになっています。
本学はまた大分市、由布市、竹田市と友好協力協定を結んでいます。また海外ではイギリスのバース・スパー大学、オーストラリアのクィーンズランド・インターナショナル・ビジネス・アカデミー、中国の江漢大学、韓国のソウル市立大学、東西大学とも友好協力協定を結び、短期の留学生を送っていますし、今年は更にその範囲を広げようと努力をしているところです。国際的な交流の機会を含む様々な経験が、学生生活をさらに豊かにしていくことでしょう。
さて、先ほど教養という言葉を申し上げましたので、それについてもう少しお話ししましょう。カリキュラムには一般教養という名前を与えられている科目がありますが、それぞれの学科での専門教育の中には、他学科に開放されているものもあります。他学科の学生はそのような科目を履修することにより、専門外の世界にも目を開くことができ、とりもなおさず教養豊かな教育を受けることが可能となるわけです。豊かな教養とは、広い範囲で様々な専門分野の基本を学ぶことによって、考えがより深くなり、様々な社会の現象を理解し、判断でき、視野が広がるようになることを意味します。部活やオフ・キャンパスの生活でも、目指す専門の異なるもの同士が、共通の目的に取り組む機会が増えるのはすばらしいことだと思っています。本学の持つ可能性をとことんまで試してみるのが、充実した学生生活を送る上で大切ではないでしょうか。
専攻科についてもお話ししておく必要があります。芸術系の学科には造形と音楽の2コースの認定専攻科があります。短大卒業後更に二年間の研鑽を行って、学士号をとることができるようになり、この春初めての修了生が40名、学士号を取得しました。そして、4年制大学の大学院に合格した方も複数出ています。今回専攻科に進まれる皆さんにとって、短大と認定専攻科の合計4年の勉学は、4年制大学を漫然と過ごすのに比較してその集中度においてはるかに勝るものです。一層の専門性獲得のために自信を持って進まれて、更に学習を重ねて所期の成果を挙げられるよう心から願うものです。
大学にはもう一つ大切な役割があります。それは「真理の探求」です。今までの教育では、すでに分かっていることを先生から教わって知るということが主体でした。しかし大学では、専門分野で研究、つまりは真理の探求を行っている先生から、どうすれば真理の探求ができるのか、そのやり方を学ぶことが大切なのです。真理の探求の過程で何が大切かというと、それは、「好奇心を持つ」ことです。別の言葉で言えば、「なぜ?」と疑問を持つということです。「なぜ?」と疑問を持つことがどうして大切かというと、好奇心を持つことによって発見が生まれる可能性が高まるからです。このこと自体、真理の探求のスタートラインに立ったことに他なりません。
何十年か前、私が金属やその応用部品を作る会社で働いていたとき、扱っていた製品の品質をどう高めるかを必死で考えたものです。当時は、日本製品の品質は悪く、安かろう悪かろうと言われていました。しかし日本中の会社が同じように努力した結果、世界で最も品質が高く安定性のある製品を作ることができるようになりました。当時の世界の常識は、作ったものを検査して規格に外れたものを不合格にしていけば、出来上がった品物は皆よいものになるという考えだったのですが、これでは検査に時間はかかるし、不合格品は無駄になってしまいます。そのうえ、検査しきれずに合格品の中に不合格品が混じり込む危険性もあります。それに比べると、私たち日本人が考えついた不合格品を出さない「ものづくり」では、このようなことは起こりませんでした。
その頃、合い言葉になっていたのが「なぜなぜ5回」という言葉でした。これはトヨタ自動車が始めた合い言葉で、何か不具合が起きたとき、「なぜか?」と問いかけ、その原因を調べます。そこで何らかの原因が出たとすると、「なぜそんなことが起きたのか?」と2回目の質問をするという風に5回も繰り返せば、それ以上は質問できないほどの本質的な原因に突き当たるというのです。別に5回繰り返すのが大切ではなく、それ以上は考えられないほどの根源的な原因を取り除けば、品質は一挙に上がることを私たちは知ったわけです。このような徹底的追求のことは、「原因の根元断ち」と呼ばれました。頭の良さとか要領の良さだけでは、このような単純で徹底的な作業に勝つことはできないのです。好奇心を持つことから始め、「原因の根元断ち」ができるまで追求すれば、その努力がよい成果に繋がる一番の早道になるのだと、私は信じて疑いません。
最後に、私が本学の将来をどう考えているのかを申し上げましょう。総合大学などとは違い、本学の規模は決して大きくはありません。しかし、ダイアモンドは小粒でもキラリと光るように、本学もキラキラ輝く大学にしていきたいと考え、努力をしています。輝くためには、そのもの自体がよい品質であることだけでなく、中に入ってきた光が外に向かって反射して出て行かなくてはなりません。皆さんと力を合わせて、この大学から外に向かって強い光を出すことで、周囲の方々から「この大学で学んでよかったね」と言われるよう、努力をして行きたいと念じています。どうか皆さん、私と一緒になって好奇心一杯で頑張っていこうではありませんか。
さて、いよいよ来週早々からオリエンテーションが始まり、皆さんは最初に何を、どの先生に教わるのかを決めていく作業に入ります。明日に向かって、待ったなしの毎日が始まります。しかし私は信じています、皆さんのパワーを、そして好奇心一杯の眼を。
さて、いよいよ来週早々からオリエンテーションが始まり、皆さんは最初に何を、どの先生に教わるのかを決めていく作業に入ります。明日に向かって、待ったなしの毎日が始まります。しかし私は信じています、皆さんのパワーを、そして好奇心一杯の眼を。
平成21年4月3日
大分県立芸術文化短期大学 学長 中山 欽吾